2015年 前期 操体法講習会(臨床家向け)12回シリーズ2日目1/22(木)行いました。
今期のテーマは、
『操体法 動きと自律神経バランスの関連を探る』
『内臓のバランス 観察と調整』です。
併せて、骨盤、椎骨の触診理論もお伝えしていきます。
講義では、前回ご質問頂いた、「なぜ操体法でからだが変わるのか」というご質問に対する一つの解説として
快感覚、脳の情動系の働きについて少しお話ししました。
まずは、ネットからわかりやすい記事をご紹介します。
心地よい情動、脳内で快情動が生まれるには、報酬系と呼ばれる脳内システムが関与していますが、このシステムは扁桃体を中心とするシステムと密接な関係を持っています。扁桃体、視床下部を経由した情動刺激や腹側被蓋野と呼ばれる中脳の特定の領域を経由した快感、満足感を引き起こす刺激が、大脳腹側の深部に位置する神経細胞集団である側坐核で神経伝達物質のひとつドーパミンの放出を促します。この側坐核内でのドーパミン放出がもとになって、脳内に心地良い感情が生ずると考えられています。このシステムは、正常な快感とともに、麻薬や覚せい剤のような薬物による快感や、そのような薬物への依存の形成にも関わることがよく知られています。
この回路が活性化すると、心臓の拍動、筋肉の緊張や呼吸数の変化など自律神経系の反応が確認されています。
強い情動(快、不快とも)鎮痛効果あり。
「ニューロン新生の分子基盤と精神機能への影響の解明」ニュースレター「Brain and Mind Vol.4」2006年9月発行抜粋記事 脳と心のお話(第四話)「恐怖する脳、感動する脳」より、
ところで、
前回のブログの記事(1/21)で、橋本先生と沖ヨガ(沖正弘先生)の関係は、思いのほか深かったことを書きましたが、
この、情動(快、不快)についてお二人が述べている箇所があるのでいくつか引用してみます。
まず、沖正弘先生の文章から、
「私たちのからだを守るはたらきとしての”いのち(心身)”には、いのちのことば(一番奥のこころといってよいのだろうか)が与えられている。
それは、快、不快の反応でからだによいものは快感で、悪いものには不快感で答えてくれる。」
「からだの自然的要求に従った、もっともバランスのとれている自然性のときのみ、真実の喜びが生まれるのだから、不自然生活をしながらもからだの要求に正しく従う工夫をすることである」
と、結構 操体法と共通した文脈が出てきます。
しかし、実際の不自由な生活のなかでも適応性、順応性をを身に着けるべきとして、
「ヨガの行法の目的は、動物的自然性や健康度ではなく、いかなる生活や環境にも適応できる
人間的自然性を身に着けることである」
「ヨガによる病気の治し方」沖正弘 白揚社 1965年代1版発行
と述べて、ヨガによる身体の訓練と、秩序性、順応性を身に着けることを説いています。
とても良いことを書かれていますが、沖先生のスタイルは、どちらかといえば「訓練して鍛えよ」的なところがあるかと思います。
それに対して、橋本敬三先生は、からだを調整する方法論を述べている中で、「快」という言葉を使っています。
「力の方向を探知するのに、無理のないよう、患者の快、不快をたずねることも初めは必要である。」「漢方と漢薬」昭和13年(1938年)
「整復原点へ近づくほど快適感覚を覚えるのである。だから快適の絶頂において、少し力を撓めておいて、一挙に瞬間的に脱力すれば元のポジションにスポッと納まる特性があるのである。」「医道の日本」昭和40年9月号(1965年)
ただ面白いのは、「人間悲願の達成へ」という箇条書きの文章の中で
「11.原始感覚の安定感、満足感に行きつく。つきつめると快、不快となる。
12.機関(器官か?)は構造と運動の両面において、快不快の間を可逆的に連動変化する。
13.運動分析をして、快のヴェクトルのフィードバックを行えばよいことが判った。」
と、快、不快を原始感覚と位置づけ
「17.原始感覚は意欲と追及の仕方で、向上または衰退する。」「日本医事新報」昭和52年(1977年)
として心との関連もその後述べています。
脳の情動の回路としては、哺乳類になってはじめて発達した大脳辺縁系(海馬、帯状回、扁桃体など)が関与して、快、不快と結びついた本能的情動、感情、行動に繋がる動機を生起させているので、確かに原始感覚ともいえると思いますが、
最近の神経科学では、情動は思考、学習、記憶、認知機能などと同様にヒトで最も発達した高次機能の一つとして捉えられるようになっているようです。
「痛みと鎮静の基礎知識 上」小山なつ 技術評論社 2010年 46ページ
ちなみに、先に書いた、脳の報酬系回路、脳の快の中枢を発見、発表したのは、1954年ジェームズ・オールズとP.ミルナーです。
操体法に欠かせないキーワード「快、不快」について改めて文献をいろいろ見てみました。言葉にも歴史があるんですね!
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